
「DXを推進してきたものの、現場は疲弊し成果が見えにくい」——そんな悩みを抱える企業担当者に向けた記事です。多くの組織がDXの導入期を終え、いま求められているのは"業務最適化"という地に足のついた視点への転換といえるでしょう。当社がDX第2フェーズを乗り越えるためのヒントをお届けします。
「DX疲れ」が起きる背景と原因
多くの企業がDX推進に取り組んできた一方で、 現場の疲弊や成果への不満が蓄積する「DX疲れ」 が深刻化しています。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX白書2023」によると、DXに取り組む企業の割合は年々増加しているものの、「成果が出ている」と回答した企業は約半数にとどまっているのが実情です。
なぜこうした状況が生まれるのでしょうか。その原因を理解することが、DX第2フェーズへの転換点となります。以下の3つの観点から詳しく見ていきましょう。
ツール導入が目的化してしまう落とし穴
DX推進の初期段階で最も多い失敗は、ツール導入そのものがゴールになってしまうことです。 「他社が導入しているから」「補助金が出るから」といった理由で新システムを入れたものの、業務フローに合わず使われなくなるケースは珍しくありません。
たとえば、チャットツールを導入したのにメール文化が残り、連絡手段が二重化して逆に工数が増えた——そんな声は現場で頻繁に聞かれます。ツールはあくまで手段であり、 解決すべき業務課題が明確でなければ定着は困難 だといえるでしょう。
現場の負担増と成果実感のギャップ

DXの取り組みが増えるほど、現場には新しいオペレーションの習得や既存業務との並行作業が求められます。 その負担感に対して、目に見える成果がすぐには出ないため、「何のためにやっているのか」という疑問が広がりやすくなります。
総務省「令和5年版 情報通信白書」でも、DXの課題として「人材不足」「効果が不明確」が上位に挙げられています。特に中間管理職は、上からの推進指示と下からの不満の板挟みになりがちです。こうした構造的な問題が、組織全体の「DX疲れ」を加速させる要因と考えられます。
経営層と現場の温度差が生む疲弊
経営層が掲げるDXビジョンと、現場が日々直面する業務実態とのあいだには、しばしば大きな溝があります。 経営層は中長期的な競争力強化を見据えている一方、現場は目の前のタスクをこなすだけで精一杯という状況が典型的です。
この温度差を放置したまま新たな施策を次々と打ち出すと、現場は「やらされ感」を強め、自発的な改善意欲が失われていきます。DX第2フェーズに進むためには、まずこのギャップを認識し、 現場起点で課題を再定義する姿勢 が不可欠でしょう。
DX第2フェーズで重要な「業務最適化」の考え方
DX疲れを乗り越えるカギは、 新しい技術の追加ではなく「業務最適化」への視点転換 にあります。第1フェーズではデジタルツールの導入が中心でしたが、第2フェーズでは既存の業務プロセスそのものを見直し、本当に必要な業務に集中する発想が求められます。
ここでは、業務最適化を進めるうえで押さえておきたい3つの視点を解説します。
業務最適化とDX推進の違いを整理する
業務最適化とは、業務プロセス全体を俯瞰し、無駄や重複を排除して最も効率の良い状態を目指す取り組みです。 DX推進がデジタル技術の活用を軸にするのに対し、業務最適化はその前提となる業務設計そのものに焦点を当てます。
両者の違いを整理すると以下のとおりです。
| 観点 | DX推進(第1フェーズ) | 業務最適化(第2フェーズ) |
|---|---|---|
| 主な目的 | デジタル技術の導入・活用 | 業務プロセスの再設計・効率化 |
| アプローチ | ツール起点 | 課題起点 |
| 成果指標 | 導入率・利用率 | 工数削減・品質向上 |
| 推進主体 | IT部門中心 | 現場部門との協働 |
この整理からもわかるように、 第2フェーズでは「何を導入するか」より「何をやめるか・変えるか」が重要 になります。
現行業務の可視化から始める3つの手順
業務最適化の第一歩は、現在の業務フローを正確に可視化することです。 見えていない業務は改善しようがないため、ここを飛ばして施策に進むのは避けるべきでしょう。
具体的には次の手順で進めることをおすすめします。
- 棚卸し :各部門が行っている業務をすべて洗い出し、一覧化する
- 分類 :「コア業務(付加価値を生む業務)」と「ノンコア業務(定型的・補助的な業務)」に分ける
- 優先順位づけ :ノンコア業務のなかから、自動化・外部委託・廃止が可能なものを選定する
この手順を踏むことで、限られたリソースを本来注力すべき領域に集中させる判断ができるようになります。
「捨てる判断」がDX第2フェーズの鍵
業務最適化で最も難しく、かつ最も重要なのは「やめる」という意思決定です。 長年続けてきた業務や報告書には、惰性で残っているだけのものが少なくありません。
ある製造業の企業では、月次で作成していた社内向けレポートの必要性を検証したところ、約3割が「誰も読んでいない」と判明した事例もあります。こうした業務を勇気を持って廃止し、浮いた時間を顧客対応や改善活動に充てることで、 組織全体の生産性と従業員の納得感を同時に高められる と考えられます。
業務最適化を成功させる実践ポイント
業務最適化の方向性が定まっても、 実行段階で挫折するケースは少なくありません。 大がかりな変革を一気に進めようとすると、現場の抵抗や想定外のトラブルで頓挫しがちです。
ここでは、DX第2フェーズにおける業務最適化を着実に前進させるための実践的なポイントを3つ紹介します。
小さな改善を積み重ねるアプローチ
業務最適化は、全社一斉の大改革ではなく「スモールスタート」で始めるのが効果的です。 特定のチームや業務領域で成功事例をつくり、それを横展開していく方法が現場の納得感を得やすいでしょう。
たとえば、問い合わせ対応のFAQ整備やメールテンプレートの統一など、1〜2週間で完了する施策から着手します。小さくても目に見える成果が出ると、チーム内に「変えてよかった」という実感が生まれ、次の改善へのモチベーションにつながります。 この好循環をつくることが、DX疲れを克服する最大の処方箋 だといえるでしょう。
外部パートナーの活用で属人化を防ぐ

業務最適化を社内リソースだけで進めようとすると、特定の担当者に負荷が集中し、属人化が進むリスクがあります。 BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)やコンサルティングなど、外部パートナーの知見を適切に活用することが有効です。
外部パートナーを選定する際は、以下の点を確認するとよいでしょう。
- 自社の業界・業務内容への理解があるか
- 業務設計から運用改善まで一貫して対応できるか
- 改善効果を定量的に示す仕組みを持っているか
第三者の視点が入ることで、社内では「当たり前」と思っていた非効率に気づけることも多く、 客観的な業務分析は最適化の精度を格段に高めます 。
効果測定の仕組みをあらかじめ設計する
「やって終わり」にしないためには、施策実行前に効果測定の指標と方法を決めておくことが欠かせません。 KPI(重要業績評価指標:目標達成度を測る定量的な指標)を設定せずに改善を進めると、成果の有無が判断できず、現場のモチベーション低下を招きます。
具体的には、対応時間の短縮率、エラー件数の減少、従業員満足度の変化など、定量・定性の両面から測定項目を設計しましょう。月次や四半期ごとに振り返りを行い、 数字に基づいて次のアクションを決める PDCAサイクル(計画・実行・検証・改善の循環)を回し続けることが、業務最適化を継続的な成果へとつなげるポイントです。
よくある質問
DX疲れとは具体的にどのような状態ですか?
A. DX疲れとは、デジタルトランスフォーメーションの推進にともない、ツールの習得負担・業務の二重化・成果が見えないことへの不満などが蓄積し、組織や個人が疲弊している状態を指します。特に、導入したツールが定着しないまま次の施策が始まるような状況で顕著に表れます。
業務最適化はどの部門から始めるべきですか?
A. まずは定型業務が多く、改善効果が測定しやすい部門から着手するのがおすすめです。カスタマーサポートやバックオフィス(経理・総務など)は業務プロセスが比較的標準化しやすく、成功事例をつくるのに適しています。そこで得た知見を他部門へ横展開するのが効果的な進め方です。
DX第2フェーズに外部支援は必要ですか?
A. 必須ではありませんが、外部支援を活用するメリットは大きいといえます。社内だけでは気づきにくい業務の非効率を客観的に分析できるほか、専門的なノウハウにより最適化のスピードと精度が向上します。特に、社内に専任の推進担当を置く余裕がない場合は、外部パートナーとの協働が有効な選択肢となります。
業務最適化の効果はどのくらいで現れますか?
A. 施策の規模や対象範囲によりますが、FAQ整備やテンプレート統一といった小規模な改善であれば1〜3か月程度で効果を実感できるケースが多いです。業務プロセス全体の再設計を行う場合は、半年から1年程度を見込んでおくとよいでしょう。いずれの場合も、事前にKPIを設定し定期的に測定することが重要です。
まとめ
DXの第1フェーズでツール導入を進めてきた企業の多くが、いま「DX疲れ」という壁に直面しています。本記事では、その原因を ツール導入の目的化・現場と経営層の温度差・成果実感の欠如 の3つに整理し、第2フェーズで求められる「業務最適化」の考え方と実践ポイントを解説しました。
重要なのは、新しい技術を追加することではなく、 現行業務を可視化し、やめるべきものを見極め、小さな成功体験を積み重ねていくこと です。効果測定の仕組みを設計し、外部パートナーの客観的な視点も取り入れながらPDCAを回し続けることが、持続的な成果につながります。
パーソルコミュニケーションサービス株式会社は、「接点から、感動を」というミッションのもと、お客さまの業務課題に寄り添い、業務設計から運用改善までを一貫して支援しています。DX疲れを感じている方、業務最適化の進め方にお悩みの方は、ぜひお気軽に 当社問い合わせフォーム よりご相談ください。