
「DXを推進したいが、社内に適切な人材がいない」「DX人材の育成をどこから始めればよいか分からない」——そんな課題を抱える企業担当者の方へ向けた記事です。本記事では、DX人材育成の基本的な考え方から具体的な進め方、よくある失敗とその対策までを解説します。DX推進を担う人材を育成し、組織変革を実現するためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
DX人材育成が企業に求められる背景
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は、もはや一部のIT先進企業だけの課題ではありません。あらゆる業種・規模の企業にとって、デジタル技術を活用して業務や事業モデルを変革できる人材の育成が急務となっています。
この章では、なぜ今DX人材育成が強く求められているのか、その背景を3つの観点から解説します。外部環境の変化と自社の状況を照らし合わせながら読み進めてみてください。
経済産業省が示すDX推進と人材不足の現状
経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」では、2025年以降、既存システムの老朽化により最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると警告されました(出典:経済産業省「DXレポート」)。いわゆる「2025年の崖」と呼ばれるこの問題は、多くの企業経営者に危機感を与えています。
一方で、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX白書2023」によると、DXを推進する人材が「大幅に不足している」と回答した企業は約半数にのぼります(出典:IPA「DX白書2023」)。つまり、変革の必要性は認識されているものの、それを担う人材が圧倒的に足りていないのが現状です。
この需給ギャップを埋めるために、企業が自ら人材を育てる取り組みが不可欠だといえるでしょう。
外部採用だけでは補えない理由
DX人材の確保手段として、まず外部からの採用を検討する企業は少なくありません。しかし、即戦力となるDX人材は市場全体で争奪戦が続いており、中小企業や非IT業種の企業にとっては採用のハードルが非常に高いのが実情です。
さらに、外部から迎えた人材が自社の業務プロセスや企業文化を十分に理解するまでには時間がかかります。技術スキルだけでなく、自社固有の業務知識や社内の人間関係の把握も、DX推進には欠かせない要素です。
こうした背景から、外部採用と並行して社内人材の育成を戦略的に進めることが、持続的なDX推進の鍵になると考えられます。
社内育成が経営戦略に直結する根拠
DX人材を社内で育成する最大のメリットは、業務の現場を深く理解した人材がデジタル技術を活用できるようになる点にあります。現場の課題を肌感覚で知っている社員だからこそ、的確な改善策を導き出せるのです。
実際に、IPA「DX白書2023」でも、DXの成果を上げている企業ほど社内のリスキリング(学び直し)に積極的であるという傾向が報告されています。育成を通じて社員のデジタルリテラシーが底上げされれば、組織全体の変革スピードが加速します。
つまり、DX人材育成は単なる研修施策ではなく、経営戦略そのものとして位置づけるべきだといえるでしょう。
DX人材育成を成功させる具体的な進め方
DX人材育成の重要性を理解しても、「具体的に何から着手すればよいのか」が分からなければ前に進めません。育成の成否を分けるのは、計画段階での設計精度です。
ここでは、DX人材育成を段階的に進めるための3つのステップを紹介します。自社の状況に合わせて、どこから取り組むべきかを見極める参考にしてください。
育成対象となるDX人材の役割を定義する
DX人材と一口にいっても、その役割はさまざまです。まずは自社のDX推進に必要な役割を明確にすることが出発点となります。経済産業省の「デジタルスキル標準」では、DX推進に関わる人材類型として以下のような分類が示されています。
- ビジネスアーキテクト:DXの目的設定や業務変革を主導する人材
- データサイエンティスト:データを分析し意思決定を支援する人材
- ソフトウェアエンジニア:システムやアプリケーションを開発・運用する人材
- デザイナー:顧客体験価値やサービス設計を担う人材
- サイバーセキュリティ:安全なデジタル環境を構築・維持する人材
すべての役割を一度に育成する必要はありません。自社の事業課題に照らして優先度を決め、段階的に取り組むことが現実的です。
スキルマップで現状と目標のギャップを可視化する
育成対象の役割を定義したら、次に行うべきは現在の社員が持つスキルと目標水準との差を可視化する作業です。この「スキルマップ」の作成により、育成計画に具体性が生まれます。
スキルマップには、たとえば「データ分析の基礎知識」「プロジェクトマネジメント能力」「業務プロセス設計力」などの項目を設定し、社員ごとに現在のレベルを評価します。目標レベルとの差が大きい領域が、優先的に育成すべきポイントとなるのです。
可視化することで経営層への説明もしやすくなり、予算確保や社内合意形成がスムーズに進むという副次的な効果も期待できるでしょう。
研修・OJT・外部支援を組み合わせた育成設計
DX人材の育成手法は一つに限る必要はありません。研修・OJT(実務を通じた訓練)・外部パートナーの活用を組み合わせることで、効率的かつ実践的な育成が可能になります。
具体的には、以下のような組み合わせが効果的です。
- 座学研修:デジタル技術やDXの基礎知識をインプットする段階
- ハンズオン研修:ツールの操作やデータ分析を実際に体験する段階
- OJT・実践プロジェクト:自社の業務課題を題材に、学んだスキルを実務で試す段階
- 外部パートナーとの協業:専門知識やノウハウを持つ企業の支援を受けながら進める方法
座学だけで終わらせず、必ず実践の場を設けることが定着率を高めるポイントだと考えられます。
DX人材育成でよくある失敗と対策
DX人材育成に取り組む企業は増えていますが、思うような成果が出ないケースも少なくありません。失敗パターンをあらかじめ把握し、対策を講じておくことが成功への近道です。
ここでは、企業が陥りがちな3つの失敗とその具体的な対策を紹介します。自社の取り組みと照らし合わせ、改善のヒントにしてください。
経営層の関与不足が招く形骸化
DX人材育成が形だけの取り組みに終わる最大の原因は、経営層が育成の目的と方向性を十分にコミットしていないことにあります。現場任せ・人事部任せでは、育成が事業戦略と結びつかず、成果の見えない研修が繰り返される事態に陥りかねません。
対策として有効なのは、経営層自らがDXビジョンを発信し、育成計画の承認プロセスに関与することです。加えて、育成の進捗や成果を定期的に経営会議で報告する仕組みを設ければ、組織全体の優先度が高まります。
経営と現場が同じ方向を向くことで、育成施策は初めて実効性を持つといえるでしょう。
技術偏重で業務理解が追いつかないケース
プログラミングやAIなどの技術スキルばかりに注力し、ビジネス視点の育成が不十分なケースも見受けられます。どれだけ高度な技術を習得しても、それを自社の業務課題に結びつけられなければ、DXの成果にはつながりません。
この問題を防ぐためには、研修カリキュラムに「業務プロセスの理解」「課題発見力」「プロジェクト推進力」といったビジネススキルを組み込むことが重要です。技術とビジネスの両輪で育成を設計しましょう。
実際の業務改善プロジェクトを研修の題材にすることで、技術と業務の接点を自然に学べる環境が生まれると考えられます。
育成後の活躍の場がないことによる離職リスク
時間とコストをかけて育成したDX人材が、社内に適切なポジションや挑戦の機会がないために離職してしまう——これは多くの企業が直面するリスクです。スキルを身につけた人材ほど市場価値が高まるため、活躍の場がなければ転職を選ぶのは自然な流れともいえます。
対策としては、育成と同時に以下のような受け皿を整備することが求められます。
- DX推進専門チームやプロジェクトの新設
- 育成修了者に対するキャリアパスの明示
- 社内公募制度や部門横断プロジェクトへの参加機会の提供
「育てて終わり」ではなく、育てた人材が活躍し続けられる組織づくりまでをセットで考えることが不可欠です。
まとめ
本記事では、DX人材育成が求められる背景から、具体的な進め方、そしてよくある失敗とその対策までを解説しました。ポイントを振り返ると、以下の3点に集約されます。
- DX人材育成は経営戦略として位置づけること。現場任せにせず、経営層が方向性を示す
- 役割の定義→スキルの可視化→育成手法の設計という段階的なアプローチで進める
- 育成後の活躍の場を同時に整備し、人材の定着と成果創出をセットで考える
DXの成功は、テクノロジーの導入だけでは実現しません。それを使いこなし、事業を変革へ導く「人」の存在が不可欠です。パーソルコミュニケーションサービス株式会社は、「接点から、感動を」というミッションのもと、お客さまの組織変革を支援しています。
DX人材育成の進め方や体制づくりについてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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よくあるご質問
育成の目標レベルや対象者の現状スキルによって異なりますが、基礎的なデジタルリテラシーの習得であれば3〜6か月、実践レベルのDX推進人材を育てるには1〜2年程度を見込むのが一般的です。短期集中型の研修と中長期のOJTを組み合わせると効果的でしょう。
IT部門だけに限定する必要はありません。むしろ、営業・企画・製造・管理など事業部門の社員こそDX人材育成の重要な対象です。現場の業務課題を最もよく知る社員がデジタルスキルを身につけることで、実効性のある変革が進みやすくなります。
厚生労働省の「人材開発支援助成金」や経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」など、DX関連の人材育成に活用できる公的支援制度があります(出典:厚生労働省・経済産業省 各公式サイト)。制度の内容や要件は年度ごとに変わるため、最新情報を確認のうえ活用を検討してください。