(写真左から)
PHCホールディングス株式会社 経営企画部 担当部長 池田和人氏
PHCホールディングス株式会社 経営企画部 グローバルVOC推進課 課長 山本健史朗氏
パーソルコミュニケーションサービス株式会社 ビジネス本部 営業統括部 営業部 第一グループ マネジャー 山下清貴
PHCグループ(以下、PHC)では、事業が拡大する中でグループ全体の強みであるヘルスケア領域におけるタッチポイントの多さを存分に生かし、PHCグループ内連携を通じたシナジー創出の強化など、今まで以上にお客様対応の高度化と運用品質の向上が求められていました。
また、より専門性の高い製品・サービスを扱うようになったことで問い合わせ内容も高度化・多様化し、ナレッジ共有や対応体制のさらなる強化も求められていました。
そこでPHCは、より良いお客様対応の実現を目指し、コンタクトセンター運営を支えるパートナーとして、社員が担当していたお客様相談窓口の問い合わせ対応業務をパーソルコミュニケーションサービス株式会社(以下、CSL)に委託しました。
問い合わせ対応の効率化だけでなく、VOC(Voice of Customer:お客様の声)の活用やDX推進を通じて、お客様の声を企業価値向上につなげる仕組みづくりを進めてきたPHC。
今回は、その背景や成果、今後の展望について、両社のご担当者にお話を伺いました。
コンタクトセンター運営・VOC活用支援
事業拡大に伴い問い合わせ内容が高度化し、現場の対応負荷が増加していた
問い合わせ窓口の一次対応体制を構築し、現場の負荷を軽減
対応ノウハウが担当者ごとに蓄積されており、業務の属人化が進んでいた
ナレッジや教育体制を整備し、安定した品質で問い合わせ対応できる運営体制を実現
問い合わせ件数の管理が中心で、顧客の声を十分に活用できていなかった
VOC分析やFAQ活動を通じて、お客様の声を業務改善や経営判断に活用できるようになった
背景
高度化する顧客対応に向け、運営体制の変革を決断
PHCでは、長年にわたり自社内でお客様相談窓口を運営していました。旧パナソニックヘルスケア時代から、お客様対応業務を行ってきましたが、事業の変革とともに取り扱う製品やサービスも大きく変化していきました。
2012年の三洋電機株式会社のヘルスケア事業の統合以降、ライフサイエンス事業や病理事業など、より専門性の高い製品・サービスを提供する企業へと成長し、問い合わせ内容が高度化・多様化していきました。
当時はPHCの社内メンバーを中心に運営されていましたが、ナレッジ共有や対応品質の標準化の重要性が高まっていました。
「担当者が変わると対応品質が変わる」「ナレッジが十分に体系化されていない」「安定的な運用が難しい」――。
こうした課題に加え、ヘルスケア製品を扱う企業として、より高品質なお客様対応の体制を構築する必要性が高まっていました。また、問い合わせ対応を担う人材の育成や継承も大きな課題となっていました。
当時について、PHCホールディングス株式会社 経営企画部 グローバルVOC推進課 課長 山本健史朗氏(以下、PHC山本氏)は以下のように振り返ります。
PHC山本氏:
社内でお客様対応を行いながら、専門性を持つプロにサポートいただく方がよいのではないかと考えました。社内の限られた人員で専門性の高い対応品質を維持し続けることも大切ですが、品質面だけでなく、人材の継続的な確保や育成という点でも、専門パートナーにサポートいただくことが最善だと思いました。」
品質向上と持続可能な運営体制の両立に向けて、PHCは新たな選択肢を模索し始めました。
こうした背景から、業務委託にとどまらず、「お客様対応品質の向上」と「継続的に進化できるコンタクトセンター運営」の実現を目指し、将来的な事業成長を支えるパートナーの検討を開始しました。
導入
「まず話を聞く」姿勢が決め手
2019年、本格的に外部パートナーの検討を開始したPHCは、複数の企業を比較検討しました。
しかし、多くの提案は大規模なシステム導入やサービスメニューの説明が中心で、求めていたものとは少し異なっていたと言います。
導入当時について、PHC山本氏は次のように振り返ります。
PHC山本氏:
「私たちが求めていたのは、システムやサービスを提案するだけではなく、まず現状を理解し、自社に合った形を一緒に考えてくれるパートナーでした。」
複数社を比較する中で、PHCが重視していたポイントが見えてきました。
そんな中で出会ったのがCSLでした。
PHC山本氏:
「CSLのできることをアピールするのではなく、当社の話を聞こうとしてくれました。さらに、引継ぎ計画から立ち上げまでのスケジュールや引継ぎ時に必要な教育プラン、当社の情報・経験をナレッジにまで高めるご提案など、実現したいことに真摯に耳を傾け、それに対する具体的なご提案内容を数多く示していただきました。現状の課題を深く理解した上で、実現に向けた道筋を具体的に示していただけたことから、『一緒にやりましょう』という言葉にも信頼感を抱き、この会社なら安心して任せられると感じました。」
PHCが感じた安心感の背景には、課題の理解を重視するCSLの提案姿勢がありました。
当時の提案を担当したパーソルコミュニケーションサービス株式会社 ビジネス本部 営業統括部 営業部 第一営業グループ マネジャー 山下清貴(以下、CSL山下)は、こうした思いを次のように伝えています。
CSL山下:
「当初からシステムや運用ありきではなく、まずPHC様の現状や課題を理解することを大切にしていました。そこから、PHC様にとって最適な形を一緒に考えながら進めていくことを意識していました。」
当時は、現場運営に合わせて複数のツールを活用しながら問い合わせ管理を行っており、今後の拡張性も見据えた運営基盤の整備が検討されていました。そのような状況に対してCSLは、いきなり仕組みの刷新を提案するのではなく、まず現状を理解するためのアセスメントを実施しました。
2019年夏ごろから現地訪問を重ね、実際の業務を細かく分析。問い合わせ履歴の確認や担当者へのヒアリングを行いながら、業務の可視化と標準化に取り組みました。
その中で、重点的に取り組むべきテーマの一つとして見えてきたのが、対応知識の共有と標準化でした。
各担当者が得意な製品や領域を持っており、問い合わせ対応の品質は個人の経験や知識に依存していました。
そこで両社は、過去の問い合わせ履歴を分析しながら、問い合わせ全体の約80%をカバーできるナレッジや教育資料を段階的に整備しました。さらに、担当者へのヒアリングを重ねながら研修カリキュラムの構築も進め、属人化の解消に取り組みました。
導入当時を振り返り、PHCホールディングス株式会社 経営企画部 グローバルVOC推進課のプロジェクトメンバーの皆様(以下、PHCプロジェクトメンバー)からは次のような声が聞かれました。
PHCプロジェクトメンバー(運営担当):
「当社の知識や経験だけでは補えない部分を、CSLの知見で支えていただき、スムーズに導入を進めることができました。特に業務の可視化やナレッジ整理については、私たちだけでは気づけなかった視点も多く、客観的な立場から整理・提案いただけたことが大変助かりました。」
また、導入後も継続的な改善活動を推進しました。
当初のCRM基盤であるMicrosoft Dynamics 365の構築からスタートし、その後、現場主体で改善を進められるよう、「kintone※1」を活用した顧客対応基盤「VOiCe if※2」の構築に両社が連携しながら取り組みました。
さらに、FAQやナレッジの蓄積・活用を推進する「Tsunagaru活動※3」などを通じて、問い合わせ対応の標準化と継続的な品質向上を実現しました。
こうした改善活動について、パーソルコミュニケーションサービス株式会社 ビジネス本部 カスタマーサクセス統括部 第一サービス部 マネジャー 折戸正行(以下、CSL折戸)は次のように話します。
CSL折戸:
「センターを立ち上げて終わりではなく、PHC様と定期的に課題を共有しながら改善を積み重ねてきました。VOC活用やナレッジ整備の取り組みも、現場と一緒に育ててきた活動だと考えています。」
こうした地道な改善活動の積み重ねが、その後の運営品質向上やVOC活用の基盤となりました。
パーソルコミュニケーションサービス株式会社
ビジネス本部 カスタマーサクセス統括部
ビジネス推進部 山本睦幸
PHCホールディングス株式会社 経営企画部
グローバルVOC推進課 課長 山本健史朗氏
パーソルコミュニケーションサービス株式会社
ビジネス本部 カスタマーサクセス統括部
第一サービス部 マネジャー 折戸正行
| ※1 kintone (キントーン) |
サイボウズ株式会社が提供する業務アプリの開発を簡単にできるクラウドサービスです。 |
|---|---|
| ※2 VOiCe if (ヴォイス・イフ) |
各部署に点在する「お客さまの声(VOC)」を一つに集約し、全社(国内)で共有・活用するための、kintoneを活用した顧客対応基盤です。 お客さまの「もしも(if)」に込められた期待や想いを起点に、新たな価値の創造を目指しています。 |
| ※3 Tsunagaru活動(つながる活動) | 異なる部門間が連携し、お客さま対応に必要な知識や情報をFAQとして継続的に蓄積・活用する「Tsunagaru活動」を推進しています。 「どのような対応が必要か」「対応に必要な情報は何か」といった疑問を解決するとともに、担当者が経験の中で培ったノウハウや判断基準などの暗黙知をFAQとして可視化し、担当者間で知識をつなぐことで、対応品質の標準化と継続的な向上を図っています。 |
効果
お客様の声を起点に、対応品質と業務効率を向上
導入から7年。PHCとCSLは継続的な改善活動を重ねることで、お客様対応品質の向上と運営体制の高度化を実現してきました。
まず大きな成果として挙げられるのが、対応品質の可視化です。
導入前は問い合わせ件数の集計が中心で、応答率や処理時間などKPIを継続的に把握・管理することが難しい状況でした。導入後は両社が協力して応答率や処理時間、エスカレーション率などの指標を可視化し、継続的な業務改善サイクルを構築。あわせてFAQやナレッジ整備を進めることで、対象窓口において応答率95%以上を安定的に維持しています。
こうした取り組みは、お客様対応品質の向上だけでなく、事業部門の業務負荷軽減にもつながっています。
その一例が、毎月の定例会を通じたVOC分析と改善提案です。
VOC分析を担当するメンバーからは次のような声も聞かれました。
PHCプロジェクトメンバー(分析担当):
「VOCや現場の声を分析し、毎月の定例会で改善策までご提案いただけることを大変ありがたく感じています。現場では見えにくい傾向や課題を整理して共有いただけるため、改善活動につなげやすくなっています。また、さまざまな要望にも柔軟に対応していただき、課題解決に向けて伴走していただいている点も高く評価しています」
VOC分析の取り組みは、改善提案にとどまらず、システム活用の高度化にもつながっています。
また、システム面でも継続的な改善が進められています。「kintone」を活用した顧客対応基盤の運用では、業務ニーズに合わせて柔軟に機能を見直しながら、より使いやすい環境づくりを推進しています。
システム面の改善については、次のような声も聞かれました。
PHCプロジェクトメンバー(IT担当):
「『できる・できない』だけでなく、『こうした方が良いかもしれません』という提案までいただけることが大きな価値です。課題が発生した際にも一緒に解決策を考えていただけるため、安心して相談することができています。」
こうした提案型の支援については、現場からも高い評価が寄せられています。
PHCプロジェクトメンバー(品質担当):
「ご依頼したことに対して、手順書まで含めたプラスアルファの提案をいただける点が印象的です。単に依頼事項へ対応するだけでなく、運用しやすい形まで考えてご提案いただけるため、現場としても非常に助かっています。担当者一人ひとりに丁寧に寄り添いながら課題解決を支援いただける姿勢は、お客様満足度の向上にもつながっていると感じています。」
こうした現場に寄り添った支援は、日々の運営だけでなくお客様対応全体の品質向上にもつながっています。
その効果は、病理事業における問い合わせ対応の改善という形でも表れています。
病理事業に携わるPHCプロジェクトメンバー:
「以前は技術担当者が現場作業中に問い合わせ対応を行うケースも多く、作業の中断や折り返し対応が発生していました。しかし、現在は一次対応体制が整備されたことで、多くの問い合わせをその場で解決できるようになりました。その結果、技術担当者の作業中断や折り返し対応の工数が減り、お客様の待ち時間短縮や問題解決までのスピード向上にもつながっています。」
VOC活用で、経営を支える情報活用基盤へ進化
さらに、大きな変化を実感しているのは現場だけではありません。
VOC活用の変化について、PHCホールディングス株式会社 経営企画部 担当部長 池田和人氏(以下、PHC池田氏)は次のように話します。
PHC池田氏:
「以前は問い合わせ対応そのものが目的でしたが、現在はお客様の声をVOCとして経営に活かせるようになりました。改善活動につなげる視点を持てるようになったことは大きな変化です。実際に、お客様の声はFAQ改善や業務改善提案、製品改善へのフィードバック、顧客体験向上施策などにつながり、企業活動全体に活かされるようになっています。」
お客様の声を経営へつなげる仕組みが整ったことで、コンタクトセンターの役割そのものも大きく変化しました。
こうした取り組みを通じて、お客様窓口は「問い合わせ対応の場」から、経営判断や事業改善を支える情報活用基盤へと進化しました。
想定外の変化にも対応できる運営体制を構築
また、両社の取り組みは、予期せぬ環境変化への対応力という面でも大きな成果を生みました。
2020年のコロナ禍においては、センター立ち上げ直後という状況にもかかわらず、早期にハイブリッド運営体制を構築。PHCとCSLが連携しながら在宅勤務環境の整備を進め、安定した窓口運営を継続しました。
さらに、ワクチン保管用途で使用される超低温フリーザーへの問い合わせが急増した際も、FAQ整備や運用ルールの見直しを迅速に実施。
前例のない状況下でも対応品質を維持し、お客様への安定したサポートを実現しました。
今後の展望
VOC・DX・AI活用を通じて、企業価値向上を支えるパートナーへ
PHCでは現在、お客様の声を経営戦略へ反映する取り組みをさらに強化しています。
経営企画部門がVOCを管掌していることも特徴の一つであり、顧客満足度向上だけでなく、企業価値向上や将来の成長戦略につなげる重要な経営資源として捉えています。
2025年度からは新たな中期経営計画2027がスタートし、DX・AI活用も重要なテーマとして掲げられています。
営業情報やCRMデータだけでは見えない顧客ニーズを把握するために、コンタクトセンターに蓄積される膨大なVOCデータを活用し、製品開発やサービス改善、新規事業検討など幅広い領域への展開を目指しています。
PHCホールディングス株式会社 執行役員 経営企画・DX推進・リスクマネジメント・IT担当 渡邉享英氏(以下、PHC渡邉氏)は次のように語ります。
PHC渡邉氏:
「お客様の声は、単なるお問い合わせ情報ではなく、企業価値向上を支える重要な経営資産だと考えています。
DXやAI活用が進む中で、コンタクトセンターに蓄積されるVOCは、営業情報やCRMデータだけでは見えない顧客ニーズや課題、さらには市場の変化や将来の事業機会を把握するための重要な情報源になります。
PHCグループでは、お客様の声を経営の意思決定につなげることを重視しており、今後は製品開発やサービス改善に加え、新規事業の創出や事業戦略の立案など、より幅広い領域でVOCを活用していきたいと考えています。
その実現に向けては、日々の安定した運営支援にとどまらず、『どのような顧客インサイトが得られるのか』『どのような課題や機会が見えているのか』『次に何を行うべきか』といった提案型の支援を期待しています。
CSLには、コンタクトセンター運営を担うパートナーにとどまらず、お客様の声を企業価値向上や事業成長につなげる戦略的パートナーとして、これからもともに新たな価値創出に挑戦していただきたいと考えています。」
PHCが描く今後の方向性に対し、CSLも同じ視点で取り組みを進めています。
パーソルコミュニケーションサービス株式会社 ビジネス本部 カスタマーサクセス統括部 ビジネス推進部 山本睦幸(以下、CSL山本)は次のように語ります。
CSL山本:
「この7年間は、私たちが支援するというよりも、PHC様と一緒に課題を解決してきた時間だったと感じています。これからも二人三脚で、お客様の声を企業価値向上につなげる取り組みをご支援していきたいと思います。」
7年間にわたる取り組みを振り返る中で、多くのご担当者から語られたのは「パートナー」という言葉でした。
お客様対応の高度化からVOC活用、DX推進まで、両社は常に課題と向き合いながら改善を重ねてきました。
PHCとCSLは、お客様の声を企業価値向上へつなげるパートナーとして、これからも変化を恐れず、新たな変革に挑戦していきます。
パーソルコミュニケーションサービス株式会社 プロジェクトメンバー